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愛媛の宿・観光施設のPR動画 予約前に伝わる情報とは

夕暮れの和室の客室。開け放った障子の先に山並みが広がり、座卓に急須と器が置かれている

「写真はプロに撮ってもらっているし、枚数もある。それでも他の宿と差がつかない」。宿泊施設や観光施設の方とお話ししていると、こういう相談をいただきます。

私は愛媛・今治を拠点に映像制作をしています。下見で施設を歩いていて思うのは、宿や観光施設の写真はもうかなりの水準まで撮られているということです。足りないのは写真の質ではなく、写真では渡しきれない情報のほうでしょう。

予約前の人が何を不安に思っているか。そこから逆算すると、動画で映すべきものが見えてきます。

宿の写真は、もう十分きれいに撮られている

宿を探すとき、私たちはOTAの写真を何十枚もスワイプします。客室、大浴場、料理、外観。どれもきれいで、見比べているうちに区別がつかなくなる。写真が悪いわけではありません。写真はいちばんいい一瞬を切り取るものなので、どの宿も最良の一瞬が並び、結果として横並びになります。

そこで残っているのが、時間の流れと音です。廊下を歩いて客室のドアを開けるまでの数秒。露天風呂に落ちるお湯の音。朝カーテンを開けたときに部屋がどう明るくなるか。これは写真では渡せません。

飲食店や小売店の動画は、来店前に店の空気を届けるのが役割でした(愛媛の店舗・飲食プロモーション)。宿は少し軸が違います。お客様はその場所に一泊二日いる。買っているのは商品ではなく時間です。だから伝えるべきものも、一枚の絵ではなく時間の流れになります。

予約前の人が本当に確認したい4つ

宿を予約する前、人は楽しみより先に小さな不安を確認しています。何を撮るかも、私はここから逆算します。動画で解けるのは、だいたい次の4つです。

1つめは、部屋に入った瞬間の広さ。写真の客室は広角レンズで撮るので実際より広く見えます。見る側もそれを知っているので身構えています。カメラが入口から窓まで歩く速さで進む数秒。それだけで距離感が伝わり、着いてからの落差がなくなります。

2つめは、風呂までの動線。大浴場は何階か、部屋から遠いか、エレベーターを乗り換えるか。お子さん連れや足腰に不安のある方には、写真の美しさより先に知りたい情報です。廊下、階段、入口を続けて映すと、文章より速く伝わります。

3つめは、食事が出てくる場面。料理写真はどの宿も強いのですが、抜け落ちるのが出てくる場面です。目の前で火が入る、蓋を開けて湯気が上がる、皿が置かれる動き。おいしさは静止した皿より、動きと音のほうに宿っています。

4つめは、周辺の景色。窓からの眺めと、宿の周りに何があるかは別の情報です。海までどれくらい近いのか、山にどう囲まれているのか。空撮なら上から一度引くだけで位置関係が伝わります(向く題材はドローンの活用シーンに)。ただし市街地や温泉街のように人と建物が密集した場所は、飛ばす前に許可と安全確認が要ります。

1回の撮影で押さえる時間帯

宿は光で表情が変わる建物です。ロケハンで同じ場所を朝と夕方に見に行くと、別の場所かと思うほど違って見えることがあります。何を撮るかと同じくらい、いつ撮るかが効いてきます。とはいえ営業は止められないので、一日の空き時間に合わせて割り振ります。

朝は、朝食の場面と、客室に入る自然光。人の少ない時間に外観も押さえられます。昼はチェックアウトからチェックインまでの数時間が客室撮影の本番で、清掃の終わった部屋から順に回ります。夕方は外観がいちばん良く見える時間帯。空の色が変わるまでの短い勝負なので、位置は昼のうちに決めておきます。夜はロビーの灯り、露天風呂の湯気。写真では出しにくい落ち着きが出ます。

この割り振りは下見をしていないと組めません。当日いきなり伺って、じゃあ夕方はここで、とは決められないからです。県内なら事前に足を運べるぶん当日が速くなります(下見で何を見ているかは愛媛のロケ撮影に)。

もうひとつ、必ず最初に決めるのがお客様の映り込みの扱いです。人が入らない時間に撮る、後ろ姿だけにする、協力いただける方にお願いする。このどれで行くかを撮影日の前に決めます。曖昧なまま当日を迎えると現場で止まります。

撮った素材の置き場所で効き方が変わる

同じ素材でも、置く場所で求められる形が変わります。1本作って全部に貼ると、どこでも中途半端になりがちです。

自社サイトのトップは音なし・自動再生が前提です。最初の数秒でどんな宿かが伝わる引きの絵を置き、説明はテロップに任せます(ホームページに動画を載せると)。

Googleビジネスプロフィールは、地名と宿名で検索した人が最初に触れる場所です。館内が動く短い映像が1本あるだけで写真だけの施設と差が出ますし、検索から予約までの距離がいちばん近い場所でもあります。

OTAの紹介欄は、まさに比較されている真っ最中の場所。長い本編より、客室と風呂と食事を短く見せるほうが向きます。

SNSの縦型は、まだ宿を探していない人に届く唯一の出口です。ここだけは目的が違い、予約の後押しではなく、こんな宿があるのかと知ってもらう入口になります(縦型リール)。

一度の撮影で素材を多めに押さえておけば、この4か所に出し分けられます。逆に置き場所を決めずに撮ると、縦型に切り出せない構図ばかりになって撮り直しになります。

インバウンドを見込むなら、字幕を先に設計する

海外のお客様を見込むなら、作る前に決めることが2つあります。

ひとつは、ナレーションに頼らない構成にすること。声で説明する作りにすると、言語を増やすたびに録り直しが要ります。映像の流れだけで意味が通るように組んでおけば、文字を差し替えるだけで済みます。

もうひとつは、テロップの置き場所です。SNSでもOTAでも画面の下側はボタンや説明文で隠れます。字幕を下ぎりぎりに入れていると、多言語版で文字数が増えたときに隠れる範囲へ食い込みます。最初から余白を持たせておくと後が楽です。

写真がもう十分にある施設ほど、動画で足すべきものははっきりしています。時間の流れと、音と、そこにいる感覚。まず縦型を1本作って反応を見てから本編に進む順番でも遅くありません。うちのこの時間を見せたい、というくらいのまだ固まっていない話からで構いません。

よくある質問

Q. 営業中でも撮影できますか?

できます。客室はチェックアウト後からチェックイン前、共用部はお客様の少ない時間帯に合わせて回るのが基本です。一日の動きを教えていただければ、営業を止めずに済む時間割を組みます。

Q. お客様が映り込む場合はどうしますか?

原則として映り込まない時間と角度で撮ります。人の気配がほしい場面は後ろ姿やシルエットにするか、ご協力いただける方にお願いする形です。方針は撮影日の前に決めておきます。

Q. 撮影は何日くらい必要ですか?

館内をひととおり押さえるなら1日、朝と夜の両方をきちんと撮るなら1泊を挟む形が確実です。客室が多い施設や季節を分けたい場合は複数回に分けます。用途が決まれば日数は逆算できます。

Q. 費用の相場はどれくらいですか?

内容によって幅が大きい分野です。市場では、短い縦型1本と施設全体をまとめる数分の本編とで、費用の桁がひとつ変わることも珍しくありません。撮影日数、撮る時間帯の数、仕上げる本数で決まるので、置き場所と用途が決まればそこから見積もれます。